知の力日記帳

6人の知の力を集めて「生きる」力を説き起こします。

第28回:第1章 個の話 第4話(1)

理屈は何でも良い、何かしたい。
知の共有をしようと6人が集まりました。

知を共有する6人の縁を広げ、6人の経験知を徹底的に共有し、6つの視点から「生きる」力を説き起こします。

どなたもお気軽に。コメントをお待ちしています。

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「生きる」力! ~不可思議な6? 空(くう)の中身~
第28回:第1章 個の話 第4話(1)
生命システムとは何か?
~ 人間の不可思議な能力「オートポイエシス」・・努力と天賦の才? ~


オートポイエシス (autopoiesis) とは、W・マトゥラーナ(1928年9月14日~、チリの生物学者)と、マトゥラーナの教え子であったF・バレーラ(1946年9月7日~2001年5月28日、チリの生物学者)の二人が、「生命とは何か?」を追求し、1970年始めに、生命システムの本質に迫り、「オートポイエシス」と言う概念を提唱しました。

二人は、細胞の代謝や神経系に着目し、個々の物質の機能を超えたシステムとしての特質に本質を見て、自己決定的なシステムの概念として「オートポイエシス」を唱えました。自己創出とも言われる概念です。

それは、わたしたちが自律的に救われている姿から、変換と相互作用を通じて自己を自律し、再生する生命システムとしてオートポイエシスをとらえればよいでしょう。

「オートポイエシス 生命システムとは何か」(1980年、W・マトゥラーナ、F・バレーラの共著、河本英夫氏訳、国文社1991年)によれば、「オートポイエティック・マシンは、構成素が構成素を産出するという産出ネットワークとして、有機的に構成されたシステム」と説いています。

このとき、構成素自身は、

  1. 変換と相互作用を通じて、自己を産出するネットワークを絶えず、再生産し、
  2. また、その空間内において構成素は、ネットワークが実現する位相的領域を特定することによって、自らが存在する

という2つの特性を掲げています。つまり、ここでいう、位相的領域の特定は、構成素が構成素を産出してオタマジャクシが蛙になるという形態的な非連続的変化を、水から地上という環境上の激変を含む位相的変化によって説明しています(出典:『サイバネティック・ルネサンスー知の閉塞性からの脱却』(石川昭・奥山真紀子・小林敏孝編著/工業調査会/1999年/74頁)。

「オートポイエシス」の概念は、あのノーベル物理学賞を受賞したイリヤ・プリゴジンが主張する自己組織化(Self-Organization)の概念と結びつくのではと思われます。

自己組織化の考え方は、1977年に『散逸構造論』でノーベル賞を受賞したベルギーの物理学者イリヤ・プリゴジンの提唱する、『我々が住むのは、成長したり減衰したりする多様な【ゆらぎ】の世界であり、その【非平衡不安定な状態】における【個の自由】なふるまいから、【全体の秩序が創発】されてくる』とする生命論的世界観から生まれた『生命論パラダイムの理論』から導き出された概念です(出典:『知の経営~透き通った組織~』髙梨智弘著/白桃書房/2009年/265頁)。

このような概念が、柔軟な経営の形態として、実際に使われているとは驚きです。次回からは、いくつかの事例を挙げてみることといたしましょう。